2020.03.16今月のメディカサイト特集

「注文をまちがえる(かも)喫茶店」裏ストーリー

松山市で「注文をまちがえる料理店」開催

 

令和2年1月27日(月)、愛松亭「漱石珈琲店」(愛媛県松山市一番町3-3-7)で開催された、「注文をまちがえる(かも)喫茶店」

イベントは大成功を納めましたが、実行までの道のりは決して平坦なものではありませんでした。

そんな「注文をまちがえる(かも)喫茶店」の裏ストーリーを、発起人の松山市社会福祉協議会の大塚 将護さんにお話を伺いました。


松山市社会福祉協議会 総務調整課・施設管理課
課長 大塚 将護 さん

 

「注文をまちがえる(かも)喫茶店」に取り組もうと思われた理由を教えてください。

 

これまで松山市社会福祉協議会では、認知症への理解を深めるために、講演会や映画上映など、様々な取り組みを行ってきましたが、どうしても「介護に興味がある人」「介護関係者」向けの取り組みとなってしまうのが課題でした。
もっと、一般の方々に認知症を知っていただきたい、理解を深めていただきたい。
そのためには、どのようにしたら良いのか?
とずっと考えて続けていたのですが、答えはなかなか出ませんでした。

昨年2019年3月4日~5日に、厚生労働省の職員向け食堂で開催された「注文をまちがえる料理店」のニュースを目にする機会がありました。
そこでは認知症の人たちが食堂で活き活きと働かれていました。
「まちがってもごめんね」というコンセプトで、相互理解を目的としたイベントであると知り、「これだ!」と思ったのです。

「注文をまちがえる(かも)喫茶店」は、どういったメンバーで運営されているのですか?

 

早速、愛媛県介護福祉士会や地域包括支援センター、大学の先生、JAえひめなどに相談したところ、意気投合してくださりました。
そこからは「この指とまれ!」方式でメンバーが集まり、6名の実行委員会で進めていくこととなりました。
2019年4月から、毎月、1、2回集まり、議論を深めたのですが・・・。
このイベントは、なんといってもご協力いただける「飲食店」が決まらないことには始まりません。
しかしながら、このプロジェクトの題名は「注文をまちがえる」というもの。
注文を間違えてはいけない飲食店にご理解いただくのは、とても大変なことなのです。
お店に賛同いただいても、なかなか決裁が下りないということもありましたね。

開催する場所に、何か強いこだわりなどはありましたか?

 

愛媛県・松山市で初の取り組みになりますので、「松山らしさ」のある場所やお店で開催したい、というこだわりや想いがありました。

らしさといえば、道後や松山城などは、とても魅力的な場所ですよね。
例えば、道後のスターバックスさんも候補にあがりました。
スターバックスさんは、2017年9月に、東京のスターバックス町田金森店さんで「注文をまちがえる料理店」が開かれた実績があります。
ご相談すれば、前向きな回答をいただける可能性がありましたが…。
スターバックス道後温泉駅舎店さんは、1階でドリンクを作った後に、2階まで上がって給仕しなければなりません。
ご高齢の皆さんに、ドリンクを持って2階まで上がっていただくのは、なかなか難しいでしょう。
残念ながら、ご相談前に諦めざるを得ませんでした。

開催する場所に、愛松亭「漱石珈琲店」を選んだ決め手は何でしたか?

 

そんな時、萬翠荘の横にある愛松亭「漱石珈琲店」さんが候補にあがりました。
松山市でも特に歴史のある萬翠荘の敷地内ですので、「松山らしさ」は十分です。

早速、運営委員で珈琲を飲みに出かけました。
とても素敵なお店で、珈琲もケーキもとても美味しい。
入り口に広いテラスもあり、招待客の方々に待ち時間も楽しんでいただけることでしょう。
「ぜひ、この店でやってみたい!」
お店の方に主旨を説明したところ、快く賛同いただくことができました。

ホールスタッフとして参加される、認知症の症状を持たれる方々はどのように選ばれたのでしょうか?

 

愛媛県松山市で第1回目の「注文をまちがえる(かも)喫茶店」を開催するにあたり、きちんと主旨が伝わるイベントにするためにも、参加条件を明確に決めさせていただきました。
このイベントや、参加条件に賛同いただいたデイサービスや病院を利用されている方々から6名のホールスタッフを決めさせていただき、当日は5名の方にご参加いただいたのです。

実行委員会で決めた参加条件は以下の通りです。

参加条件
① 歩行に問題がない
② お盆にものをのせて運べる腕力がある
③ 排泄に問題がない
④ 本人に働きたい意思がある
⑤ 家族の同意が得られる
⑥ メディア等の取材もOK
⑦ 会話を楽しむことができる

ホールスタッフのお仕事を楽しんで行っていただくためには、これらの条件は必須となります。

以前、他県で開催された「注文をまちがえる料理店」を視察した際に、思うことがありました。
そのイベントに参加している認知症の症状のあるホールスタッフの方々に、サポートスタッフがぴったり付いて、1から10まで業務を行っている様子が見られたのです。
ホールスタッフのご本人は、サポートスタッフの横について、手を引かれながら歩いているだけという状況。
これでは、ご本人にやりがいも楽しさもありませんし、何より、お客さんとの会話も生まれません。

私たちが開催する「注文をまちがえる(かも)喫茶店」では、サポートスタッフとして参加いただく方に、やりがいや楽しさをしっかり感じていただけるよう、検討して決定させていただきまいた。

愛媛県初開催の「注文をまちがえる(かも)喫茶店」を実施するにあたり、どのようなことを意識されましたか?

 

愛媛県初開催のイベントですので、「今後も続けることができる」イベントにすることを意識しました。
例えばイベントタイトル。
もし次回のお店が「うどん店」だった場合、イベントタイトルは「注文をまちがえる(かも)うどん店」となります。
どのようなお店でも対応できるイベントタイトルを名付けました。

「認知症」という言葉だけでも、一般の方は少し身構えてしまいます。
そのため、プロのデザイナーに依頼して、「注文をまちがえる(かも)」の「鴨」をイメージしたデザインを作っていただきました。

鴨のロゴを使ったお店の立て看板も作り、立て看板は今後のことを考え、「どのようなお店にも合う」色合い、デザインにしています。
エプロンとネクタイの制服も作成しました。

今後、このイベントに取り組まれる方々に貸し出していく予定です。

初回はプレオープンとのことでしたが、次回からは何か違うのでしょうか?

 

今回の「注文をまちがえる(かも)喫茶店」は、愛媛県松山市の第1回目の取り組みですので、初回はあえて「エンターテインメント」と位置づけ、これから始まる多くのイベントの「プレオープン=ようこそ!」という演出にこだわりました。

本当は一般の方々にも、お客として参加していただきたかったのですが、初回は「プレオープン」ということで、招待客制を採用しました。
ご招待させていただく方は、福祉分野はもちろん、今後に繋がる可能性のある異業種の方々にもお声かけさせていただき、計54名の方々にご参加いただくことができました。

予想をはるかに上回る招待客の人数となったので、もともとの予定では1回90分の2部制だったものが、1回60分の3部制に変更することとなりました。
そのため、多くの方にこのイベントを体験いただけた反面、ホールスタッフとお客さんの交流が短くなってしまったという反省点もありました。
この反省点は、次回の取り組みに生かしていきたいと思っています。

初回のイベントで得た経験から、何か改善を検討するポイントはありましたか?

 

第1回目の「注文をまちがえる(かも)喫茶店」では、サポートするスタッフの人数が多すぎたという反省点もありました。
3部を通して「注文をまちがえた」ケースは1件のみ。
原因としてサポートスタッフの誘導ミスもありましたので、もっとスタッフの自主性に任せる取り組みも必要だと感じています。

イベントを通して、人々の理解は進んでいるのでしょうか?

 

招待客の皆さんのアンケート回答を見たところ、イベントに満足いただけた方は94%。
「まちがえても、まぁ、いいか!と思える」方は、なんと100%で、お店における認知症理解の可能性を感じました。
「注文をまちがえる(かも)〇〇」イベントの開催を通じて、「まぁ、いいか!」と思ってもらえる文化が広がっていけば、とても嬉しいですね。

「注文をまちがえる(かも)喫茶店」というイベントは、認知症を身近に感じていただく素晴らしい取り組みではないでしょうか。

 

今回は「プレオープン」ということもあり、ケーキと飲み物という喫茶を企画しました。
次回はぜひ、料理をお出しできるイベントにしたいと考えています。

その際は招待客だけでなく、一般のお客さんも参加できるようなイベントにしたいですね。

今回のイベントでは、体験時間が1回60分と少し短くなってしまったため、ホールスタッフとお客さんの交流が短くなりましたが、次回はホールスタッフとお客さんの「共同作業」なども組み入れながら計画を立てていきたいと思います。

まとめ

 


「注文をまちがえる(かも)喫茶店」
というイベントは、認知症を身近に感じていただく素晴らしい取り組みではないでしょうか。
今後、愛媛県内では次回の開催に向けて準備中とのことです。
このイベントを通じて、お店に限らず、日常の様々な場所で「まぁ、いいか!」の精神が広がっていくことを信じています。
今後の活動の広がりが、楽しみでなりません!

 


「注文を間違える料理店」プロジェクトを深く知りたい方は、
ぜひ、こちらの書籍をご覧くださいね。
2冊セットでご覧になることをお薦めします!


注文をまちがえる料理店


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