2015.05.26今月のメディカサイト特集

『第10回日本高齢者虐待防止会(JAPEA)愛媛大会レポート 「人権の調和~一人ひとりの幸せを見つめて~」』

月21日松前総合文化センターにて、「第10回日本高齢者虐待防止会(JAPEA)愛媛大会」が開催されました。
2004年から始まったこの大会。
今回の愛媛大会は、地方大会としては初めての開催となりました。
研究結果を発表し、意見を交換。
虐待への理解を深められた、充実した一日間でした。


 

【 大会長からひとこと 】

これからの時代には、いろんな専門分野が一緒になって問題に取り組んでいくことが必要不可欠。
今回のシンポジウムのテーマにも掲げている「垣根を超える」ということが一番大切になってくるのではないでしょうか。
今回の大会をきっかけに、それぞれの専門分野が新しい視点を持ってくれれば幸いです。
日本高齢者虐待防止会が地方で開催されるのは、今回がはじめて。
ここ愛媛で開催されたということをとても嬉しく思います。
学んだことを活かし、愛媛県での活動をさらに進めていきたいです。

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第10回 日本高齢者虐待防止会 愛媛大会長
山本克司さん(聖カタリナ大学教授)

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「人権の調和」~一人ひとりの幸せを見つめて~
山本克司さん(第10回 日本高齢者虐待防止会 愛媛大会長 聖カタリナ大学教授)

■そもそも「人権」とは何か?

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今や誰もが使っている言葉「人権」という言葉。しかしその意味に関しての解釈は、個人それぞれの人格、障害のレベル、人生背景、家族関係などによって千差万別。
共通概念を持てていないのが現実ではないでしょうか。
いくら「人権」が大切だと言っても、「人権」を倫理的に理解していないと、経験や知識が異なる他分野間での連携を取るのが難しくなり、本当の意味でのサポートをすることができません。
山本先生の講演では、「人権」という言葉を考察しながら、継続的に学習していく必要性を説きました。  大会長講演の様子

■「自由」を守る難しさを理解する

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人権の中核概念に「個人の尊厳」という言葉がありますが、この定義も明確ではありません。
誰もが分かりやすい表現に置き換えると、「個人の尊厳」とは人間の「幸せ」を実現する手段=「自由」のことではないでしょうか。
認知症を患う高齢者のような社会的弱者にとっては、自由を守ることが困難です。
また介護者も同様に、「自由」が守られていないケースが多いです。
一方向から個人の「自由」を守ろうとすると、衝突が起こってしまいがち。
衝突を避けるためには、人権の「調和」が必要です。
そのためには、専門職間での連携が必要。
医療、福祉、法律、行政などの垣根を超えて、情報交換し、協力し合うことがこれからの時代には必要なのです。

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「垣根を超えよう!」

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座長 山本 克司(聖カタリナ大学 人間健康福祉学部)

シンポジスト
「看護の立場から」 岸 恵美子(帝京大学 医療技術学部)
「法律の立場から」 滝沢 香(東京法律事務所)
「医療の立場から」 日比 知栄子(とまと薬局)
「福祉の立場から」 山口 光治(淑徳大学 )国際コミュニケーション学部  シンポジウムⅠの様子

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シンポジウムIでは、「専門職間の垣根を超える」ということをテーマに、それぞれの立場から考える「虐待」についての考えが発表されました。

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看護の立場から発表した岸さんは、訪問看護を通じて、頑に介入を拒否していた患者さんの心をほどき、抱えている問題に寄り添って行っていったという自らの経験を元にお話を進めました。
人との関わりを拒否する人が抱えている問題はとても複雑です。
看護師は、健康面からアプローチすることができますが、完全に拒否している患者さんには、家に入ることさえ拒まれてしまいます。
そんなケースで必要になってくるのは、地域との連携。
「◯◯さんはいつも◯時にお弁当を買いに行きますよ」「よく公園に水をくみに行っています」など、日頃の地域とのつながりを生かしてアセスメントしていくことが大切。
専門職が抱え込むのではなく、地域や他の専門職に助けを求め、一体となって取り組んで行くことが大切と述べました。

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弁護士の滝沢さんは、高齢者虐待防止法ができたことによって、通報や届け出が増えたこと、市町村等が必ず対応するようになったという利点を述べながらも、立ち入り調査の困難性や、医療や警察などとの連携の困難性など、今の法律では対応しづらい問題点を発表。

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管理薬剤師の日比さんは、自らが経験したセルフ・ネグレストの男性との関係構築を例に、意見を発表。
次々と問題を起こしていた男性でしたが、本人の孤独と苦悩を理解し、必要とする支援を構築することによって、信頼関係を築くことができたと言いました。

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最後に福祉の立場から意見を述べた山口さん。
ソーシャルワーカーは、特に他の専門職との関わりが重要となってくる職種。
それぞれの専門性、異なる存在が他と関わり、共に歩むことに大きな意味があると説きました。

 

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大会長講演とシンポジウムIが終わると、昼食の時間が設けられました。
県外からのお客様に対して、周辺のおすすめ食事スポットのマップを配布。
また、会場入り口にて、愛媛の特産である「じゃこてん」や「はもかつバーガー」などの販売会を行い、大盛況でした。

 

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午後からは、教育講演と分科会。
各部屋に分かれ、参加者は興味があるところへ自由に行き来するスタイルで行われました。
教育講演では、日本高齢者虐待防止学会理事長(大阪アドボカシー法律事務所)の池田直樹さんによる「高齢者虐待防止法解説」。
分科会では、「施設虐待」、「多分野連携」、「認知症高齢者の権利擁護」をテーマに、各施設や専門家による研究が発表されました。

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同時に、高齢者虐待に関する相談や論文作成相談も実施。
研究結果の示説発表も行われました。

 

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「地域発 仕組みづくり」

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座長 和田 忠志(いらはら診療所 在宅医療部長)

オブザーバー 野志 克仁

シンポジスト
「行政の取り組み」 前神 有里(愛媛県職員)
「中核地域生活支援センターの取り組み」 池口紀夫(中核地域生活支援センター夷隅ひなた)
「権利擁護ネットワークの取り組み」 竹内 俊一(岡山高齢者・障害者支援ネットワーク)
「地域包括支援センターの取り組み」 畑中 真理(松前町地域包括支援センター)

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シンポジウムIIでは、地域の仕組みを構築してきた4名のメンバーによる発表が行われました。

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愛媛県職員の前神さんは、長寿介護課から異動後もライフワークとして虐待防止に取り組んでいます。
異動問題や、職員サポートの仕組みがまだ整っていないなどの問題があるものの、現場から離れていることで客観的に見ることができ、各所とのつなぎ役になれると、行政だからこそできる“公務員力”を主張。
自らの活動を紹介し、公務員のみなさんを勇気付けました。

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千葉県の中核地域生活支援センター勤務の池口さんは、地域総合コーディネーターとしての活動を発表。閉鎖的な事業・施設のオープン化、「孤独死」をなくしていくための「みまもりネットワーク」を構築し、「みまもり訪問活動」を行っているなどの実例を紹介しました。

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岡山高齢者・障害者支援ネットワークの竹内さんは、弁護士として虐待防止に取り組んでいることを発表。
報酬が見込めない、対象者が若年で第三者後見の受け皿が不十分など、個人では受任が困難な事例に対応するためにNPOを立ち上げたことを発表。
現在、正会員数300名、法人後任受任件数約230件という、全国トップクラスの成果を挙げています。

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松前町地域包括支援センターの畑中さんは、小さな町だからこその顔が見える関係を活かしながらの虐待防止に務めています。
今後は、さらに支援を強化するために研修などを行い、人材教育を行って行きたいと述べました。
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「虐待」にはさまざまな複雑な事情が絡んでいて、解決が困難なケースが多いと言われています。
被害者はもちろん、その解決に取り組んでいる人も孤独に陥りがち。
突破口を見つけるためには、ひとりで抱え込まず、連携を取ることが大切ということを改めて実感する大会でした。
発表のあとは交流会も開催され、今後、道に迷ったときに助け合える関係づくりもできたのではないでしょうか。
地域では初めての大会開催ということで、大会で学んだことを活かした、これからの愛媛県での取り組みにも乞うご期待です!

 

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